第36回目・ウィンターカップ 2018

第36回目。

ウィンターカップ福岡第一の圧勝で幕を閉じた。

地元、京都から出場している東山と2回戦で対戦した福岡第一をじっくりと観戦した。東山は、ハーフコートで勝負するいわゆるディレイオフェンスのチームと言っても良いと思う。直訳すると遅いオフェンスという意味で、遅攻のチームだ。

高校の強豪校でディレイオフェンスを主として取り組んでいる強豪チームは、あまり聞いたことが無い。何チームか観たが、実践学園は数少ない速攻を主としないチームという感じを受けたが、他は基本的にハードなディフェンスからファーストブレイクが中心だ。そして、その攻め方が、特に若い世代にとっては一番勝つ可能性が高いとも思う。まず速攻、ダメならアーリーオフェンス、それからセットオフェンスという順番ですべての攻撃の優先順位を決めておく事が勝率が上がると感じる。

実践学園は、言い方は悪いが上手いおっさんのチームがやるバスケで、一人ひとりが役割を認識し、いやらしいプレーを一回一回の攻めで繰り出すチームだ。選手が自立している感じがあり、あのスタイルで強豪校を高校生で作るのはいろんな意味で難しいと思うが、監督の指導方針が伺える良いチームだったと思う。現に今年のインターハイで、松崎裕樹と河村勇輝がいなかったとはいえ、福岡第一に勝利している。

関西では、天理大学がディレイオフェンスで有名だ。留学生がいなくなり関西2部に落ちたが、今年の天皇杯で奈良代表として出場し、ハンナリーズ相手に善戦した。佐々木隆成という178センチの選手がえげつなく、この試合でも28点を取るのだが、ハンナリーズ相手に一回一回セットオフェンスを組み立てて勝負していた。速攻以外で勝負しようと思うと、この佐々木隆成のように個人で状況を打開できる選手が一人はいた方が良いと思う。その存在を上手く使ってセットオフェンスを組み立てられるから。この佐々木隆成という選手は、かなり余裕を持ってダンクも出来るので、ハンドリングと身体能力でハンナリーズの選手相手でも、特に前半は得点を積み重ねていた。天理大学は今年の2部で優勝し、来年からは1部リーグに返り咲きだ。

福岡第一と東山の一戦を観て感じたのは、今大会の福岡第一は、日本の高校バスケットの理想的なチームかなと思えた。まず、留学生がチームの一員として悪目立ちする事なくやるべき事はしっかりと一試合通してやる。2ガードが速く、パスも出せて、得点力もある。そしてフォワードの二人は大きく、シュートレンジが広いし、ドライブの力も上手さもある。東山としては、洛南相手に上手くいったセットオフェンスで、何とか差を詰めたいと考えていたと思うが、なにせ福岡第一の速攻の速さと精度が高く、2~3本一気にやられるとすぐに10点ほどの点差が開き、気持ちが折れそうになる相手と言える。本当に爆発力があるので、気を抜くとすぐに点差が離される。そのタイミングを福岡第一は良く理解していて、一気に攻めてくる。

東山も良いドライブが何本かあったが、ことごとく福岡第一の留学生にブロックされる。あそこでドライブに行った選手が、ゴール下で他の選手、特に留学生に合わせられたらいやらしいチームとなって、もう少し良い勝負になったと思うが、素直にアタックしすぎていた。フィニッシュのいやらしさが身につけば、もう一段レベルが上がるように思う。逆に福岡第一は、直接ドライブに行く力も、合わせも上手い。東山の選手がディフェンスを諦めているシーンが何度かあったが、このレベルの試合であまり見ないシーンだ。それほど完璧に抜かれている感じが何度かあり、一気にそこで勝負が福岡第一に傾くのが分かる。

福岡第一と競ったチームは、残念ながら福岡県の決勝で当たった福大大濠だけという結果になってしまった。それぐらい全国で圧勝だったし、田臥勇太のいた時代の能代工業に留学生が日本人のように動く大型選手として入ったぐらいのインパクトがあった。

井手口監督のインタビュー記事(全国Vの福岡第一、指揮官が「日本のポイントガードは小さくても良い」と話す理由(平野貴也) - 個人 - Yahoo!ニュース)を読むと、すごく共感できる部分がある。東山の大澤監督も言っていたが日本で数少ない195センチ以上の運動能力のある子がいったチームが、どうしても有利になるという現状が日本ではあった。そのチームに行ったガード、フォワードが必然的に日本のトップクラスと認識されるという状態。もしくは、有望大型選手の行くチームに良い選手が流れるという図式。ただ、私たちの時代でも、日本のトップより上手いんじゃないかと言われる地域で有名な、くそ上手いガードやフォワードが、必ずいた。リバウンドの部分で負けるが、1対1では圧勝するようなイメージ、そんな選手だ。そんな感じの選手が、留学生の存在によって強豪校の数が増え、昔からの強豪校以外にもチャンスが出てきて、陽の目を見る状況が出てきているように感じる。より多くの選手にチャンスが巡ってきている部分がある。

リクルートが勝負を分ける部分が今もあると思うが、より戦術的な要素が勝利に影響するようになってきているのかもしれない。そういった群雄割拠の時代の中で圧勝した福岡第一は、現時点でのひとつの答えを出したように感じる大会だったと思う。

あと桜丘の富永啓生という選手も凄かった。以前のブログでも書いたが(第14回目・FIBA U17 ワールドカップ 2018 アジア地区予選(U16 アジア選手権) vsインド - バスケットボールおぼえがき)一人で得点できる高校生レベルでは珍しい選手で、福岡第一の松崎裕樹や河村勇輝と共に今後に期待できる選手が出てきてバスケファンとしては楽しみだ。